お母さんが心がける内緒の功。こうすればお父さんがすくすく育つ

内助の功という言葉があります。土佐の国初代藩主、山内一豊の正妻である見性院が夫を立てて、一国一城の主にまで出世させた立役者として評価する言葉です。そして現在でも良妻のひとつの典型的なタイプとして広く用いられる喩えになっているのです。この内助の功を目指す奥さんは多いのではないでしょうか。その志やよし、といいたいところなのですが……。

家庭が社会の一部として組込まれて機能していた時代は変化して、社会から家庭は自立しようとしている時代になってしまったことを忘れては内助も成立する余地がなくなってしまうのでは?と不安に思われないでしょうか。その不安はいつしか家庭の分裂に発展するという危険もあるのです。これはどの家庭であれ回避できない危険です。そして多くの方がその問題を抱えて相談に来られますが、基本的な部分は置き去りにされているようです。

家庭でのお母さんの役割は子どもを養い育てること。これは人間の動物として備わった本性に関わることです。ですから、同じように社会性に付いて当てはめて考えることはできません。お父さんに対して妻であるということは人間の本性の問題ではなく、社会的な問題だからです。つまり動物としてではなく人間として問われるべきことだということになります。

父親を育てるということ。母親は子を産めばそのまま母親です。このことは調べる限り数千年変化していない事実です。同時に父親は、父親になるのです。これは極めて社会的な事象といわれます。そして自分で勝手に父親になることはできません。これは人間の自己認識に関わるジレンマという難しい問題に属してしまう議論なのですが、人間は育てられて初めて何かになることができる、と理解することができるのです。

つまり父親は誰かに父親として育てられる必要があるのです。そして父親を育てることができるのは、その奥さんである母親以外にはありません。父親を育てるのが母親の役割なのです。だからこそ父親を育てる言葉が大切なことになります。人を育てる言葉、人を何かに育てていくものは言葉だからです。周囲にいる女性の意見を参考にすれば、その言葉は非常に奇妙なもの(マジック)なのです。

このマジックが使えるのと使えないのとでは、雲泥の差が生まれてくるようです。報告によれば、帰宅時間が早くなった、月の飲み代が減ったなどから始まって、頼りがいが出て来た、顔つきが優しくなったなどなど……。どれも喜ばしい変化が数週間から数ヶ月の間に生じているようです。最初は私の所に奥さんがひとりでおいでになっていたのが、ご主人を伴われておいでになるようになったというのが、なによりのことなのでしょう。

「お父さん、〜してくれて助かったわ、ありがとう」。これが公式です。〜の部分に様々な物事を当てはめて使ってみましょう。例えば「お父さん、『洗い物』してくれて助かったわ、ありがとう」と目を見て言うとき、お父さんの(つまり男の)プライドが満たされるのです。小さな取るに足りない日常のことであればあるほど、効果的でしょう。それは物事の大きさより、数が多いことが大切だからです。

月に1度の豪華な食事で生きていける人はいません。毎日コツコツと食べる食事が重要なのは誰でも知っていることです。それと同じように男を父親に育てる、あるいは良き夫に育てることも考えることができるのです。できるだけ小さな目にとまらないようなことに前述の例文と公式を利用してください。子どもたちの前で、二人きりの時に。理由を知っていても知らなくても確実に効果してきます。是非お試しあれ。