お父さんが子供たちのためにすべき最も大切な仕事はこれだった!

お父さんは元気で留守が良い。古典的な家庭観に基づいた父親像は、権威の中心を演じていて、その様子は大黒柱とも呼ばれて日本人には良く知られていました。そのような父親像が成立しなくなって、父権の復活などを求めた意見が飛び交う中、かつてのコマーシャルで用いられたフレーズはもはや父親の権威を復元する可能性がないということを決定づけたようにも思えます。

しかし、よく考えてみれば「留守が良い」ということはやはり家庭内の主権者が母親であることを宣言しているのでして、この点に関して言えば従来の日本的な封建主義を踏襲した見解であったわけです。日本的な権威主義を柱とした家庭内での父親の立場をこそ問題にすべきだと指摘していたと理解することもできるでしょう。そしてそのことは子どもを家庭内に迎える以前、夫婦が二人の時から、不変の要求なのです。

子どもを出産する前に整えておく必要があったのは、家庭内の秩序の基礎であるということができます。何かのルールを家庭に持ち込んで、夫婦が揃ってそのルールに準じた生活を建設することではありません。そんなことをすれば、ルールの決定者を争うことになるでしょう。そもそも全く違うルールの下で育ってきた人間がひとつの生活を共有するのですから、そのルールを誰が決めるのかという決定戦になってしまうのです。

社会の複雑なルールに取り巻かれた家庭内で日本的「当然」は無効です。ルールを決める基礎とはコミュニケーションの確立なのです。さらに細かく説明すれば、生活の各局面で確立されるべき応答の束だといえるでしょう。この応答の束としてのコミュニケーションが充分に確保されていれば、関係は安全・安心な状態になります。そして安全・安心な状態があって初めて、何かを構築することができるのです。

この安定したコミュニケーションの確立のために率先できる性こそ、男性であると期待します。もちろん女性が率先しても問題はありません。ここではお父さんの仕事として問題化するために、男性であることを期待しています。つまりコミュニケーションの確立をリードできることが家庭内での新しい生活を組み立てる時の柱になるということなのです。この家庭生活の柱という役割こそが、お父さんに求められる最も大切な仕事なのです。

お父さんの仕事は家庭内の秩序を示すこと。ですから、お父さんは柱として機能できれば、後はその柱を中心にして、その周囲に様々な家庭の事情を配置することができるのです。そのひとつとしてあげておく必要があることが、子どもの養育ということになるでしょう。子どもの成長家庭において家庭空間に示されている父親の存在意義は、子どもが世界を理解するための重要な基盤になることが知られています。

子どものため……という合い言葉は今でも有効でしょうか?子どものためだからという合い言葉で夫婦が一致してなんとか問題を解決しようと健闘するイメージがあります。しかし、それは入園する幼稚園のグレードのことでも、所属する進学塾のことでもないはずです。お父さんが子どもたちのためにしなければならない最も大切なことは、子どもたちのお母さんと忍耐、赦し、尊敬を尽くして接することなのです。

女性はこの3つをもって接してもらえるとき、生きいきと応答することができるのです。この3つが安心・安全を約束しているからに他なりません。忍耐はお父さんにとっては自制ですからお母さんに言うことではないでしょう。しかし、後の二つはお母さんに示す必要があります。今まで不十分であったと同意できるなら、今日から具体的に示してみましょう。長くはかからないことですから、変化が生じるまで忍耐することです。