お父さんとお母さんがコミュニケーションすれば子どもは安定する

コミュニケーションが取れた時って、ほっとしませんか?そうなんです。コミュニケーションの最も重要な効能は安心できるということにつきます。このことを逆にすると、誰かと話をしていてほっとできるときっていうのはコミュニケーションが取れた時なのです。私たちはいつでも安心したい・安全でいたいという欲求に付きまとわれているのです。マズローという心理学者は人間の欲求の一番初源に安全に対する欲求を上げています。

青年期においては強いストレスが強い自己を形成する一助となることもありますが、基本的に私たちは強いストレスに対して抵抗し続けることは不得意なのです。アドレナリンを分泌し身体は戦闘態勢に入ります。血流を抑え込み攻撃に備えます。視野が狭くなり、多量の情報を処理できなくなります。これらはストレスに対抗するために、人間の生命機能にプログラムされているので自動的に発現しているのです。

このストレスに対する抵抗プログラムは生まれながらにして備えていて、たとえ赤ん坊であっても発動するようになっています。そして保護を求めて、言い換えれば安全・安心な状況を得るために、鳴き声を上げているのです。そのような強度のストレスに曝されている子どもは赤ん坊だけではありません。言葉を話すようになった子どもであってもストレスに対してきっちり反応するのです。ただ発する信号に違いが出てくきます。

家庭にある子どもが不安定になってしまうことがあります。多いのはいわゆる夜泣き。昼夜の時間帯を学習する乳児期を過ぎても夜中に泣き出す夜泣き。これは両親を疲労困憊させてしまうほどのストレスをもたらします。その現場に発現しているのはストレスのキャッチボールだと言えるでしょう。子どものストレスが親のストレスに連鎖し、また親のストレスは子どもに伝播することになります。

ストレスは伝播し、周囲の人間を巻き込んでしまいます。満員電車の中にイライラした人が一人乗り込んでくると、その車両全体が緊張感に包まれてしまうことを経験しますが、それもストレスの伝播の一例だといえるでしょう。あるいは後ろに立っている人がチッチッチッと舌を打つ音が聞こえてきた瞬間、私たちのストレスはピークを見ます。でもストレスに曝されているのは後ろの人であるはずです。ストレスが伝播しているのです。

ストレスの発現は構成員の中で最も弱い人に見られます。ストレスがかかっている状況は、一種の我慢大会になっていますから、ストレスを発信しないで耐えることができない人に表れてくるのです。家庭の中で最もストレス耐性が低いのが子どもですから、家庭にかかっているストレスは子どもに発現するのが通常だと言われるのです。

ですから受けているストレスを発現している子どもに対して直接的なアプローチに現象を抑える効果はありません。家庭にかかっているストレスがどの経路を辿って伝播しているかを考える必要があるのです。つまり子どもにストレスを伝播した元は誰かということでしょう。それは言うまでもなく母親なのです。母親が生活空間のなかで不安を覚えているとき、ストレスを発信しなくても、ストレスは子どもに伝播してしまいます。

ですから、子どもが不安定になっている場合、アプローチする相手はその子の母親だということができるでしょう。そして母親が不安定になっている原因を探ります。人間の構造においてストレスに対抗する安心と安全を提供できるのはコミュニケーションでした。即ち、お父さんとお母さんがコミュニケーションできているかを確認することが先決問題になるのです。子どもの問題もまずはお父さんお母さんなのですね。