とっても簡単!本当はコミュニケーションとは応答の繰返しだった

コミュニケーションには様々な技術が開発されており、多くの技術書が出版されています。それらの技術書を読むことには実に大変な労力を要します。それぞれがほぼ専門書に近い内容であることはハードルのひとつに違いありませんが、同時に専門書の性格から全く違うことがコミュニケーションについて語られているように見えてしまうので勉強するほど混乱してしまう可能性もあるのです。

コミュニケーションのすべてを活用し尽くすのでなければ、コミュニケーションは破綻すると脅かされないようにしましょう。コミュニケーションはすべての人間に共通した営みなのです。意識していようが、意識していなかろうが私たちはみんながコミュニケーションをしながら暮らしています。ある違いはコミュニケーションが上手か下手かの程度の違いに過ぎません。

確かにコミュニケーションの技術を向上すれば、いろいろな人との関わりが潤滑に進むでしょう。しかし、コミュニケーションの範囲は広大です。卓球等の二人以上で行なうゲームもコミュニケーションの範疇に入りますし、武術であってもそれはコミュニケーションの上に成立した交渉なのです。なのでコミュニケーションのすべてに熟達すると言うことは果てしない夢を見ているのとあまり違わないことになってしまいます。

それよりも、簡単な原則を毎日繰り返して確認・学習することでひとつのパターンに熟達することをお薦めしたいのです。この方が遥かに有益なのは説明をまたないでしょう。繰り返すことで効果を確認できることには大きな意味があるのです。学習の度毎に報酬が受け取れることと同じだからです。コミュニケーションの成功時にある報酬は、わかり合えたという実感です。

その方法とは、感情焦点型おうむ返し法です。具体的にはこのように行なわれるでしょう。
[お父さん]ただいま〜。
[お母さん]お帰りぃ〜。帰り道は大変だった?
[お父さん]そろそろ暑くなってきたからなぁ、それなりに帰りの電車が大変だった。
[お母さん]そうなの、暑いと電車通勤も大変よね。
簡単なやりとりですが、お互いが掛け合っている言葉が応答していることが重要なのです。単純に相手のいった台詞をおうむ返しにしてはいけません。相手の言葉を受けるのです。お父さんが言った、帰りの電車が大変だったという言葉が、お母さんによって変形されて同じことを表現している(つまりおうむ返し)になっています。

日常の言葉の掛け合いからコミュニケーションにする時のメリットは、ラポールという手続きを省くことができる点にあるかも知れません。本来コミュニケーションを図るといった場合、必ずラポールという信頼関係を形成することが前提として求められます。しかし、家族間でのコミュニケーションでは基本的に信頼関係が維持されていることを前提することができるわけです。

会話によるコミュニケーションは続けられます。
[お母さん]だったら食事の前にお風呂にします?
[お父さん]そうだね。お風呂ならさっぱりできるね。でもお腹が空いているから食事がしたいな。
ここにも注目すべきポイントがあります。お母さんはお父さんの行動パターンを決めつけていません。その時の気分でお父さんが行動を自分で選択できる可能性を示唆しているのです。そしてお父さんは「そうだね」とお母さんの提案を肯定的に受けていることを忘れてはならないのです。

自分の主張が相手の主張と拮抗してしまうことはたたあるでしょう。しかし、相手の主張を否定することから会話を継続しコミュニケーションを良好に保つことはできません。相手のいい分をしっかりと受け止めてから、自分の判断と根拠を明確に提示するように心がけたいものです。